案件概要
EQ House はメルセデス・ベンツ日本と竹中工務店という強力なタッグで、人・建築・クルマの新たな関係性を提案できるモデルとして六本木に建築された未来の家。コンセプトの提示だけでなく、実際に体験できるというところが重要なポイントとなるため、協力各社の技術の粋を集めて設計から建築、実際の運用に至るまでの工程がなされている。弊社は、室内にあって家と車の各種情報を表示するための透過型のUI、ガラスインターフェース内のコンテンツ実装や、エントランスの大きなガラス扉をはじめとして内外の各所のガラス窓に貼られている調光フィルムの制御システムなどを担当した。
コメント
ここ数年積み上げた経験から、イベント会場などの短期的な搬出入にお付き合いするのは大分手慣れてきましたが、ゼロから建物を建てている現場に携わらせて頂いたのは初めての経験で新鮮でした。
ただの建物ではなく、未来を見据えて、人と建物 / 建物とクルマ / クルマと人という三者の関係性の未来を提示する、チャレンジングなコンセプトの建物です。建物自体が、生きているかのように中に居る人と呼応し、学習して、成長する。そんな建物をどうやったら作れるのか。多くの企業さん達が力を合わせる中、自分たちもその一旦を担えた事をうれしく思います。
自分たちは、ユーザの直接目に触れ、耳にし、場合によっては直接手でも触ってという、まさに建物やクルマと、人とを繋ぐ境界面のインターフェースの部分を作れるチームとしてご期待を頂き、コンテンツの実装から、ネットワーク的なデータの処理、調光フィルムの制御や照明の制御などといった、色々なパートを任せて頂きました。境界面にあってヒトと直接関わる部分で、幅広い技術的な選択肢を組み合わせられる点を武器に色々な種類のアウトプットを生み出す、というのは自分たちが意識的に取り組んでいるところでもあり、そういったご期待を寄せて頂けた事にまず感謝をしております。
実現にあたっては、我々も初めての建築現場という不慣れさもあってご迷惑をおかけする事もあり、また、弊社も含めあちこちで新しい取り組みに挑戦した結果として各種の意外な突発事象も生じ、となかなかに一筋縄ではいかないところもある案件ではございましたが、結果として出来あがった建物の中で、直接お越し頂いた方のお声を聞けるのは大変うれしい経験となりました。
調光フィルムの透過度をグラデーションさせるためのハードウェア開発とガラスIF、エントランス部の物体座標検知のソフトウェア製作を担当しました。
EQ Houseに使用されている調光フィルムはそのままだと不透明な状態ですが、電圧を加えると透明になる性質があります。用途としてはオフィスの窓やショーウィンドウに貼り付けて必要に応じて照明のようにスイッチで透明/不透明を切り替えてプライバシーの保護や演出として使われています。
今回、「生き物感」というオーダーに合わせてONとOFFしかできないこの調光フィルムを如何にして生き物の鼓動(呼吸)のように表現するかとても苦労しました。まずはフィルム特性の調査から始まり電圧制御の調査・検討・実験などを経て何回かプロトタイプの製作を行うことでようやく自由に制御できるようになりました。
思い返すと無意識に調査→実験・観測→考察(以下繰り返し)のフローを辿っていましたが、学生の頃に やらされた 実験の授業での過程は今になっても活かされているんだなぁって思います。
また、今回はユニバ的にも個人的にも初めての建築現場案件であり、EQ House自体が実験的な試みということもあってモチベーションとしては高かったのですが、いざ現場に入って作業すると建築現場特有の大変さ(安全管理と意識・気候条件・段取りetc)に触れて右往左往しながらも、いつもながら感じる「体験に勝る情報なし」を噛み締めつつ、新鮮で貴重な体験ができたように思います。